大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)5625号 判決
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【説明】
原告は、住民集会を開催するため市長に対し、被告(市)庁舎敷地内社側の広場の使用許可を申請したが、右市長は右使用を不許可とする旨の処分をした。本件は、市長の右処分により損害を被つたとして原告が市に対し損害賠償を求めた事案である。
【判旨】
三そこで、本件処分の違法性の有無について判断する。
(一) まず、本件広場の法的性質についてみるに、本件広場が被告庁舎の敷地の一部であることについては各当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、本件広場が昭和四九年に全面を舗装して駐車場として整備されてからは専ら来庁する市民および被告職員の駐車場として使用されていることが認められるから(右認定に反する証拠はない。)、本件広場は、被告の行政財産中の公用に供せられる物(地方自治法二三八条三項)に該当し、同法二四四条にいう「公の施設」ではない。
そうすると、本件申請は目的外使用の申請であるので、これに対して市長は、庁舎に附属する駐車場としての用途又は目的を妨げない限度において本件広場の使用を許可することができる(同法二三八条の四第四項)のであり、それも偏に市長の裁量にかかつているのであるから、本件処分は、裁量権の範囲をこえまたはその濫用があつたと認められる場合にのみ違法となるに過ぎない。
(二) 進んで、本件処分に裁量権の範囲をこえ、またはその濫用があつたか否かについて検討する。
本件広場が被告庁舎の敷地の一部であつて、昭和四九年に全面舗装して駐車場として整備されてからは専ら来庁する市民および被告職員の駐車場として使用されていることは前叙のとおりであり、<証拠>によれば、
(1) 昭和五一、五二年当時既に地元である泉南市周辺において関西新空港設置ならびにその前段階である気象、海象の観測施設の設置をめぐつて論議がかわされており、昭和五二年五月頃は右観測施設のうち観測塔の着工を目前にひかえていたこと、
(2) その頃、千葉県の成田空港では開港をめぐつて火炎びんや催涙弾が飛び交い、市街戦さながらの衝突が起きていると報道されていたこと、
(3) 右のような状況の下で、泉南市内には「観測塔実力阻止」というようなポスターがはられたり、右成田闘争の支援団体がビラを配り、「泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会」によつて昭和五二年五月一五日泉南市解放会館で開かれる予定であつた観測基地着工阻止集会への参加を呼びかけていたこと、
(4) 原告委員会は昭和五二年四月二五日泉南市立鳴滝解放会館を午後五時から午後一〇時までの予定で借受け、同所で観測塔の設置問題に関し運輸省の係官と話合をしたが、予定の時間を超過し、同会館の館長の再三の要求にもかかわらず同所での集会を続け、午後一一時五〇分頃まで同所を使用したこと、
(5) 本件広場の使用状況は、昭和四八年五月一日のメーデーの際被告職員組合が中心となつてこれを使用したことがあるが、そのほかに、市長が第三者に対しこれを集会等のため使用させたことはないこと、
(6) 被告の職員でもある竹中寿和が原告委員会の代表者として本件申請に及んだもので、本件申請書の記載内容の要旨は「観測基地着工も目前となり、再度これに反対する泉州住民集会を開くため、一九七七年六月三〇日(月)午後六時より本件広場を借用したい。」というもので、右記載のうち集会予定日は明らかに五月三〇日の誤りであると認められるけれども(六月三〇日は月曜日ではない)、本件申請書には集会終了の予定時間や、参加予定者数などの具体的な記載がなかつたこと、
(7) 本件処分に付せられた理由は別紙「本件処分の理由」のとおりであること、
(8) 従来の被告庁舎管理規則は第三者に対し庁舎の一部を集会のため使用させることができる定めとなつていたが、昭和五二年七月頃これを改め、本件広場を含む被告庁舎を第三者に使用させないことにしたこと
以上の事実が認められ、<証拠判断略>他に右認定を左右する証拠はない。
右の各事実によれば、本件処分の理由は、本件広場が公用物であり、従来純然たる第三者に対し集会場として貸与されたことはなく、また市長には将来もこれを第三者に貸与する意思のないこと、これらに加え、原告委員会の過去における公の施設(泉州市立鳴滝解放会館)の使用態度の悪さおよび本来なら当然記載されていなければならない集会終了予定時刻や参加予定者数の記載がない等の本件申請自体の杜撰さにあつたことは明らかであり、本件申請が憲法で保護されており、現行法体系上も手厚く保護されるべき言論集会の自由等にかかわるものであることをも考慮しても、なお、これを却下した本件処分には裁量権の範囲をこえ、またはその濫用があつたということはできない。
もつとも本件処分の理由の一の中に「貴殿が反対する観測施設の設置は市の方針と相反するものであり……」という記載があり、これだけをとつてみると、原告委員会がかかる意見を有しているが故に市長が本件処分をなしたとみなされてもやむを得ないが、右記載に続く、「……、過去の例からみて規律のある団体とは認められない。」との記載を合わせてみれば、これが前認定の(4)の事実を指していることが明らかである。したがつて、表現に妥当性を欠く点のあることは確かであるが、本件広場が公用物であり、従来純然たる第三者に貸与されたことはない等前叙の事情を斟酌すると、右記載の故に、本件処分が全体として憲法二一条一項、一九条、一四条一項に違反し、あるいは地方自治法二四四条の法意に反し違法となるものといえないことは明らかである。
(荻田健治郎 井深泰夫 近藤寿邦)